キク十五歳冬

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 トモヤは不良だけれど頭が良くて、物を知らない俺に様々なことを教えてくれた。金持ちのくせにいつも金がなくて、バカやった時は本当に楽しそうに笑って、協調性のない俺たちを纏めるのが上手くて、何考えているかわからないくせに、平等だとか世界平和だとかの話をするのが好きで。  僅かに空気を吸い込み息を止める。世界がスローモーションで回り出す。  トモヤが突き出した稲光りのような速い拳が、空を切り裂く。俺が躱すことに成功したのだ。しかし俺はこれまで何度も見た。躱されたと見せかけ、ここから肘を打ち出すのが、トモヤの常勝パターンである。だから俺は、それを先読みして、追撃もすれすれで避ける。
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