キク十六歳春

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   まだ少しだけ肌寒い季節の夕暮れ、コンビニのガラスウィンドウ越しに、肉まんを食べながら中を物色する郷田。 「おっ、あのサラリーマン、ATMから結構札出してたぞ」  咀嚼しながら喋る郷田の喋り声は、聞き取り辛かったが、いつもポケットに忍ばせたバールに手をやることから、明確に何をしようとしているのかが、分かった。 「おいおい、俺保護観察中なんだけどさ、勘弁してくれないかなー」 「かー、お前いつからそんなに日和(ひよ)たんだよ。トモヤやる時は、すっげぇ怖かったお前がさ」  まあ、お陰様で俺もコウちゃんと『同学年』で、高校ってやつに入学することになったわけであるが。空白の一年は本当に不自由で、手に入れた大空を手放し、鳥籠の中へ閉じ込められていた。
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