キク十六歳春

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 中から応答が無いと、インターホンを鳴らした主は鍵を掛けていない、俺んちへ扉を開けて勝手に上がりこんで来る。それにびっくりした俺は噎せて咳き込んだ。思わず鼻から飲んでいた牛乳が噴き出し、俺はチーンとティッシュを使い鼻かみ屑篭に捨てる。 「キクー。いるんでしょ?」  無遠慮に俺の部屋の襖を開けたのは、予想を裏切ることなくサオリである。相変わらず短いスカートと最近染めたピンクアッシュの髪の毛。ド派手な足音の持ち主は、ド派手な姿とメイクの持ち主でもあった。  サオリはいつもそうだ。アポなしで俺んちに面倒を運んでくる。  素行の悪いサオリは、父親から携帯電話を取り上げられているのだから、仕方がないと言えば仕方がないが。
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