キク十六歳春

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 なんともバツが悪いことに俺はボクサーパンツ姿。そんな俺を見たサオリは言葉を失い、キョロキョロと辺りを見回し、俺の部屋の屑篭を物色し、先ほど鼻をかんだティッシュを取り出し、くしゃくしゃのティッシュを開く。そして「あ、ごめん」と、一言俺に詫びた。  いや、違うんだ。それはそういうのじゃないんだ。牛乳なんだ。などと言い訳したくなったが、サオリはそれ以降そのことに一切触れなかった。なんだか凄く複雑な気持ちになったが、俺もそのまま流すことにした。 「何か用かよ?」 「用がなくちゃ来ちゃいけないの?」   人様の彼女、それも広田の彼女が俺の家にいるだけで、とてつもなく厄介である。そこの所をこの女は解っちゃいないのだ。 「あのさ、相談なんだけどさ、最近あっくんが変なんだ。なんか会話が噛み合わないというか」  そんなこと俺に言われても、どうしようもない。クラブで仕入れた大麻(ガンジャ)でもクってるか、いよいよシャブにでも手を出して、脳みそ腐っちまったか。正直関わりたくない。やはり面倒を運んでくることに掛けては、サオリの右に出る者はいないだろう。
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