キク十六歳春

9/11
前へ
/71ページ
次へ
 もう寝てしまおうと思ったその数分後、俺は別の世界で目を覚ます。  有り体に言うと夢を観ていた。まだ俺もサオリも幼い頃の夢。そうこれは夢のワンシーン。  懐かしくも胸糞の悪いいつかの教室、そうこれは小学生の時の記憶。俺はサオリをイジメから救いたくて、その実態を担任に告げ口したんだ。ばいきんと呼ばれていること、教科書を焼却炉に捨てられたこと、トイレに呼出せれてホースで頭から水を掛けられたこと、みんなから無視されていること、数人に囲まれ大事にしていた髪の毛をハサミでめちゃくちゃにされたこと。  そこでパッと場面は切り替わり、俺の手には血濡れた金属バットがあった。足元には血を流し、痙攣しながら倒れこんだ担任がいる。  俺は正義の味方でヒーローなのに、皆俺に怯え非難する。 「ただサオリを救いたかったんだ」  クラスの皆は俺を化け物を見るような目で視る。良いことをしたはずなのに。悪いのは担任なのに。
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加