最終章

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 広田の消息は郷田に聞いてすぐに掴めた。行きつけのパチンコ屋に居たのだ。広田は笑顔で「おお、キク。鑑別所(カンカン)から出てきたなら、一言言えよ」なんて、馴れ馴れしく話しかけてきた。頬はやせこけて、目は血走っているが、随分穏やかである。  その日、金をせびられるどころか、パチスロで勝った広田は、俺に出所祝いと称して晩メシを奢ってくれた。  見た目以外に可笑しい様子はなく、強いて言えばやけに饒舌であった。俺はカマをかけるつもりで、「サオリは元気っすか?」と、恐る恐る尋ねてみる。 「ああ、あいつか……あいつはさ、俺の部屋にいるよ。同棲してるんだ」 「久々に会いたいっすね」 「ついて来いよ」
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