最終章

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 案内されること十分程、広田は川向こうに新しく出来たオートロックのマンションに住んでいた。  可もなく不可もない、そう悪くも無さそうな綺麗な作りである。エントランスを潜り、階段を登る。  広田のあまりに普通な対応に、ただ二人して幸せな同棲生活を送っているだけなのではないか。この時、俺はそう思った。思いたかった。だがやはりその見通しは甘かった。  部屋の鍵を開ける広田。中は薄暗く、生臭い臭いが立ち込めている。嫌な予感はずっとしていた。  1LDKの寝室には、笑い声を上げる数人の男と、全裸で横たわるサオリ。それに跨る豚みたいな男がいた。  地獄絵図である。声ひとつ上げない、虚ろな目をしたサオリに、携帯で動画を撮る男たち。汚い。汚い。汚い。予想し得たはずなのに、こんなに汚いものを見たくなんてなかったんだ。俺は。俺はなんてことをしてしまったのか。全部俺の所為だ。俺が広田なんかに引き合わせなけりゃ、サオリは。
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