最終章

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「サオリはいい金ヅルだ。キク。本当にお前には感謝してる。どうだ? お前も抱いてくか? タダでいいぞ」  俺の膝は震えている。相手は全部で五人。勝ち目はない。豚が果てるまで待つか。でもダメだ。身体が言うことを訊かない。それは怒り。怒りが恐怖でガクガク震えた膝を動かす。  豚野郎の頭を俺の蹴りが吹き飛ばす。 「キク……? どうしてここへ?」  涙が枯れ果てたのか、目ヤニのついたままのサオリは俺を認識する。よく見れば、身体中アザだらけだ。 「迎えにきた。大丈夫か? 早く服を着ろよ」 「全然大丈夫じゃない」  サオリに手を差し伸べる俺。直様、広田の取り巻きが手に持つジーマの瓶で、パーンと俺の頭は、鉢割られる。  俺は広田たちにぼこぼこにされた。袋叩きである。  朦朧とする意識の中、ぴんぽーん。ぴんぽーんと、広田んちのインターホンは二度ベルを鳴らした。  俺への暴行を一旦止め、息を潜めそれを無視する広田たち。  インターホンは鳴り止み、次にノックの嵐が扉を叩く。 「警察だ」  扉の向こうから声がする。俺は大声を上げた。怯む広田たち。全ての力を使って起き上がり、下着だけ付けていたサオリに上着を掛け、手を引き扉へ走る。ドアを開けると、そこには大人がいて、「殺されそうなんです。助けてください」と情けなく縋り付く。  幸いにして近所の住人が通報し、警官が訪れたようだ。警察と広田たちが押し問答をしている間に、隙を突いて、サオリを連れて逃げ出した。
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