最終章

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「あいつらタダじゃおかねぇ」  サオリを連れて歩く夜の街。この街も随分変わった。田んぼだった土地にはマンションが建ち、こじんまりとした飲食店は、新しく出来たマクドナルドに客を取られるようになった。  俺はパチンコ店の駐輪場に停めていたジョルノに跨り、後ろにサオリを乗せる。  サオリの躰は未だ震えている。力一杯、俺の身体に両腕を食い込ませる。エンジンを掛ければ、ショボい五〇CCの音と、排気ガスの匂い。  アクセルを開け景色は流れ出す。 「ねぇ、キク。このままどこかに逃げちゃおうよ。どっか遠くで一緒に暮らそうよ」 「それもいいかもな。これで俺は広田たちに指名手配だからな」  街の明かりがキラキラ光る流星みたいで、あまりに綺麗で、願い事を込める。 「うん。それで結婚して、エッチもいっぱいして、子供沢山作って賑やかな家庭にするの」  賑やかな家庭か。俺もサオリも一人っ子だから、そういうのに本当に憧れる。  やっとのことで住宅に辿り着く。これでゴールじゃない。今頃、血眼になって広田は俺たちを探していることであろう。
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