キク十歳

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   ダイニングで買い置きの惣菜をレンジでチンする一分三十秒の温もり。俺もサオリも無言で気まずい。 「テレビでも付けようか」 「あっ、サッカーがいい」  生粋の野球ファンに今更サッカーを観ろだなんて、もちろん言葉にはしない。再び訪れる沈黙。俺は惣菜パスタをずるずるラーメンみたいに啜る。 「ゲームでもする?」  食後気まずい沈黙が耐えられなくなった俺は、サオリを自室に連れていく。  今年度版のパワプロとファミスタを出して、どちらがいい? と聞くと、それしかないの? と疑問符を疑問符で返される。  そこでツボにはまったのか、吹き出すサオリ。 「キク、ウケる。野球ゲームしかないし」  ファーストネームで呼ばれることに慣れてないウブだった俺は、恥ずかしいようなモヤモヤした気持ちが込み上げ顔が熱くなる。
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