キク十歳

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「サオリね、ゲームよりキクともっとお喋りしたかったよ。でもママそろそろ帰ってきてると思うから行くね」  立ち上がったサオリは、挨拶もろくにせずに俺んちをあとにする。ただ呆然とサオリの背中を見送る俺。  そういえば同級生を家に上げたのは初めてだった。  そしてその日からだ。  サオリが俺んちにちょくちょく来るようになったのは。  この日から彼女は何度も何度も俺んちのインターホンを鳴らす。 『ヒーローはインターホンの向こう側に』  これは無様なヒーローと迷惑なヒロインの、若く、愚かで、胸が焼け付くような追憶の記憶。    
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