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{痴れ者めが! }
あの、僕を脅しつけた声。
声の主は、ダンジョンを塞ぐ3人の衛兵の一人だった。
身長は2メートルにおよぶ。
頭から床に引きずるほどの、黒いマントで全身を覆っている。
布は分厚く、毛皮のように毛羽立ち、爆風と光を受けると柔らかそうに波打った。
そこから伸びる手は黒くて太い、指は四角いブロックを組み合わせたように見える。
その手に握られているのは、身長よりも長い棒に、短いが尖った金属を着けたもの。
槍だった。
その、トンネルでは振り回すこともできない槍を、彼らは振ろうとさえしなかった。
弾幕は、突如現れた赤い半透明の壁に阻まれ、左右に弾かれた。
異能力のバリアだ。
そう、異能力。
概念宇宙論で示される、不思議な現象だ。
宇宙概念捕捉率……通常物理学ではありえない現象を起こす力。
未来から過去に向かって流れる、現在を形づくる情報をとらえ、使う力のことだ。
僕たちの世界では、約20年前に突然あらわれた力。
何万人かに1人。それまで何の変哲もなかった人たちが、その力をあつかえる異能力者になった。
今や、同じような存在は世界中にいる。
中にはその力を平和のために使う人もいて、そういう人々はヒーローと呼ばれている。
だが、衛兵達がヒーローであるはずがない。
{虫けらが}
衛兵達が、そう言って足を進める。
見たこともない異星人なのに、日本語を使っている。
概念宇宙論は、そういう異星とのつながりから発見されたんだ。
僕の視線は、その戦場を天井から見下ろす、四方に向けられる監視カメラ程度しかなかった。
『Oh! ムシケーッラ! 』
なぜか、ッラのところで巻き舌にした声が返ってきた。
その声は、さっきグレネードを指示した女の声だ。
今まで何もなかったはずの真ん中の衛兵の足元に、赤い何かが現れた。
その次の瞬間、視界は反転した。
視界が気持ち悪くなるほどノイズで覆う。
それが収まった時、なんだ。体の感覚が蘇ってきたぞ。
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