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「今週はそれかい?」  ページを繰りつつ顔を上げる。時計の針は、いつしか四時を回っていた。とはいえ、まだ休憩時間の途中ではあるのだけれど。 「その作家、どっかで見たな。あれだ、確か前に映画になった──」 「『天泣のトワイライト』、ですか?」 「そうそう、それだ。その人だろ、それ。」  私が本を読んでいるのを見れば、すぐ何かと話しかけてくる。大して詳しいわけでもなく、ろくに本すら読んだことのないくせに、本屋の店長が務まるのだから不思議なものだ。思えばこの「本屋」は地域の中では割と大型であり、横長に伸びた建物の真ん中でCDショップと連結している。音楽が趣味な彼にとってここは「CDショップ」であり、ひょっとしたらこちらは副業のような感覚なのかもしれない。カバーのそでにちらりと目を向けると、著作リストに並んだタイトルの中に、強調された太字が踊る。 「俺も気付いたんですよ、つい先ほど。有名な人みたいですね。直木賞の候補にもいくつか挙がったことがあるとか」  作者のプロフィール欄を流し読みしながら、適当に相槌を打っておく。普段まともに読むことの無いこの部分に、初めて価値を見出した気がした。
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