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放課後は、いつも図書館に寄った。いつもと同じ時間、同じ席。向かいにはいつも、彼女が居た。
お互い話すことはおろか、ろくに顔すら覚えてはいない。俺にとって、あるいは彼女にとって、相手はまだ背景の一部だった。
俺は本を読むのが好きだった。月曜から、遅くとも水曜にかけて課題に勤しみ、残りは本を読んで過ごした。向かいの彼女もまた、静かに本を読んでいた。
ある日、親戚のおじさんから図書カードを貰った俺は、予てより目を付けていた文庫本、計三冊を大人買いすると、意気揚々と図書館に向かった。課題も比較的早めに片付いたため、存分に読書にふけるつもりだ。いつもの席の向かいでは、すでに彼女が座っていた。俺は席に着くと、買ったばかりの三冊を机に並べ、満足気に頷く。さて、どれから読み始めてやろう。たっぷり三十秒ほど時間をおいてようやく手を伸ばそうとしたその時、不動を保っていた背景の一部に、ある変化が起きた。
──あっ。
ふと、小さな声が上がった。顔を上げると、向かいの彼女がこちらを見ていた。
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