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「そろそろ店じまいだな、そっちはどうだ」
帰り支度をしていた私は、念のため今日の業務内容リストに目を向けた。
「新しく入荷した本は指示通り並べておきましたよ。それと、来月入荷の──」
「あ、違う違う。今週の本のことさ」
「あぁ、それならちょうど読み終えたので、早速書き始めようと思っていたところです」
「おう、ところでよ、その本についてなんだが」
「ええ」
思わず身構える。久しぶりにまた本のリクエストをするつもりだろうか。もはやとうに諦めたものだと思っていたのだが、さて。
「どんな話なんだ?」
「は?」
だから、その言葉に意表を突かれた。
「本のあらすじですか、どうしてまた急に」
「なんだよ、俺だってたまには気になる本ぐらいあるんだよ」
「ええ、それは、まぁ」
擦れた声が出た。酷く狼狽していた。彼が本に興味を示したことについて。
より正確に言えば、私の読んだ「あの本」について。
私は机の上に置きっ放しにしたままの、件の本を手に取った。
本のタイトルは、『時を刻む柵(しがらみ)』。
サブタイトルは、[Chronostasis Chronicle(クロノスタシス・クロニクル)]。
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