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「墓の前に立ってんのに墓の方見ないでシカトしてあさっての方向いて、挙げ句いつまで経っても自分の偽者に話しかけ続けてる主人公にこっち見ろって泣いてんですよ彼女はっ!」  一息に言い放つ。閉店した後で本当に良かった。 「うん、すまん。とりあえず、なんかすまん」  思わぬ剣幕に目をパチクリさせつつ、適当に謝る店長。猛省せよ。 「いえ、俺もすいませんでした。つい取り乱してしまい」  さすがに気恥ずかしくなり、今後こそ帰ろうと鞄に手を伸ばす。 「でも、なんでだろうな」 「何がです?」  鞄に本をしまい、肩に掛けた。 「いや、だってお礼言ってたじゃねえか、彼女、飛び降りる間際に。それも笑顔でだ。なのに、なんでそいつは彼女が自分を恨んでるだなんて思い込みをしたんだろうなって」 「それは──」  ──警鐘が聞こえる。答えてはいけない。“思い出し”てはいけない。 「…忘れたくなかったんですよ、きっと」 「どういう意味だ?」  ──立ち止まるな。考えるな。そのまま歩け。歩け。 「自分が悪者になってしまえば、その罪は一生赦されずに済む。赦されなければ、そう、自分が謝り続けてさえいれば、“過去”は、“ずっと現在のまま”です」
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