激高

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「矢木室長…こんな事は許されません!もし世界化学機構が知れば…!」 「――ここは日本なんだよ、高城君」 矢木室長はやれやれと言った風に首を振ると、冴嶋に向き直った。 「センター長、そろそろよろしいでしょうか?」 「あぁ…早くしてくれ。強いフェロモンに…もう限界だ…何と言ってもオメガを抱くのは久々だからな」 冴嶋は厭らしい笑みと共に息を深く吸っては吐く。興奮しているのだ。そして瑞貴がいる部屋の扉に手をかけた。 「っ…!冴嶋センター長、お願いです!彼の身体に負担がかかるような事は――っ!」 私は、冴嶋の白衣の袖を咄嗟に掴み行動を阻止しようとした。 「――邪魔をするなっ!!!」 しかし、即座にその腕は強く振り払われ、私の身体が後方へと飛ぶ。 身体は備品が多く並ぶガラス戸式の収納庫へと衝突し、扉こそ開かなかったものの、ぶつかった衝撃で棚の中で備品が次々と倒れ、派手な音を鳴らしていた。 「―――っ…ぐ…」 肩と背に痛みが走る中、冴嶋は忌々しく言い放つ。 「全く…宮本の狗が…。あまり調子に乗るなよ」 ギリギリと燃え滾った目はもはや正気を失っていた。性欲に支配され、瑞貴…オメガの事しか頭にないのだろう。 「矢木室長、彼はもういいだろう。追い出しておいてくれ。煩くて仕方がない」 冴嶋は早口で告げると瑞貴がいる部屋へと入室し、勢いよく扉を閉めた。 『あぁっ…あっ…来た…っ…ねぇ…早く…!早く!』 冴嶋の姿を目にした瑞貴が切羽詰まった切ない声を上げていた。 『あぁ、美味そうなオメガだ…思う存分満足させてやるよ』 そんな瑞貴に冴嶋はまるで獰猛な肉食獣と成り下がる。 瑞貴の細く小さな身体に冴嶋は覆い被さり、一心に全身を貪り始めては、彼の内腿や腰を撫で上げ、濡れた後孔に冴嶋の指が触れた。 『あっ――っん!ぁ…っ――ん!』 甘い嬌声が響いた。アルファに触れられ歓喜する瑞貴の喘ぎ声に、目を逸らし耳を塞ごうとした時、突如静寂が訪れたのだ。
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