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――薄暗い室内には暖房が効いておらず、酷く寒く感じた。 時刻は二十一時を過ぎたところで、妙な静けさに包まれていた。 窓からは月明かりが差し込み、そこから覗き見える月は綺麗に縁取られ、とても美しく輝いていた。 眼鏡越しの瞳に映る月に思わず瞬きをする。 そうか――。 外気が冷たく澄んでいるから、こんなにも月が綺麗なのかと何気に思った。 同時に、今夜は今季一番の冷え込みになると、今朝のニュースで予報士が説明していた事を思い出していた。その所為か身体は震え、吐く息は微かに白い。 否…もしかしたらこれは寒いからじゃない――。 先程から心臓は煩いほど脈打ち、今にも呼吸が乱れそうだった。 まさかと…違う…そんな事があるわけない。あってはならない。 (気の所為だ。これはただ…これから起こり得る事に、緊張しているだけだ…) 脳裏に一瞬過った別の可能性を即座に抹消し、私は深く息を吸う。 すると、早鐘を打っていた心臓は徐々に静まり、少しだが落ち着きを取り戻す事が出来た。 そして、目前のソファに身を沈める様にして座る人物を蔑む様に見下げ、こう言葉を吐いた――。
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