走る電流と攻防戦

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――アルファ特有のオーラを醸し出す藪中に目を奪われる中、やっと我に返る事が出来たきっかけは宮本室長の呑気な声だった。 「いやぁ~…藪中さんイケメンだねぇ!アルファの人ってあんまりお見掛けする機会がないからアレだけど、やっぱり何だか違うねぇ!惚れ惚れするよ~。あ、でも知り合いに一人だけアルファの人いたか。まぁでも、全然藪中さん程じゃあないなぁ!ハハハ!」 一体何がそんなに面白いのか、大きな口を開け笑う宮本室長に、藪中もつられて笑う様子を見せていた。 「そんな…自分なんて…然程皆さんと変わりありませんよ」 「嫌だな~!御謙遜しちゃって~」 恐縮ですと言った風に藪中は軽く首を振るが、絶対にそんな事思っていないと密かに確信する。 その笑顔同様、柔らかな物腰も全て嘘っぽく感じてならない。 ましてやアルファだ。世間のアルファは基本的に他の二種をどこか見下げている傾向がある。 まだ大学卒業して間無しの青二才の癖に…そう心の中で吐き捨てている自分がいた。 「…藪中君。この方はここの室長である宮本秀作さんだ」 矢木が偉そうな姿勢でソファに座りながら藪中に宮本室長を紹介する。 「化学界で著名な宮本室長の事はよく存じております。いつも素晴らしい研究をされてますよね!発表された論文や、出版された書籍は全て拝見しておりまして…実際にお会いできて光栄です!」 藪中は直ぐに雰囲気を一変させ、若干興奮気味で宮本室長に歩み寄った。
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