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「…高城君が発情期を迎えた事は、実は彼から聞いてね」
宮本室長がどこか労わる様子で私の肩を優しく叩いた。
「……え?」
瞬き藪中に視線を送ると彼は少し申し訳なさそうに微笑んでいた。そんな藪中に宮本室長が願い言う。
「藪中さん…高城君の事、頼みましたよ。それに彼はすっご~く頑固だからねぇ!僕もねぇ~仕事の度に参ってるんだ」
「それは充分理解しています」
藪中はそれを否定するどころか、困ったと言いたげに肯定していた。
「ちょっと…!何を言って…」
失礼な人達だと立ち上がろうとするが、衣服が乱れたままであった為、それは踏み止まる。
「高城君…確かに君はオメガだけど、僕の優秀な部下で誰より信頼出来る。その知性もまた光る物がある…あとはもう少し素直になって自らを受け入れたら、きっと、もっと楽に生きられるよ、例えオメガであってもね…」
柔らかな口調で告げた宮本室長は、まるで不在の間、私と藪中の間で何が起こったのか全て見てきたかのようだった。
「――宮本センター長…お急ぎ下さい!」
そんな時、調査委員の一人が戻って来たのか、廊下から大きな声が響いた。
「あぁ、ごめん!えーと、理研は強制捜査の為に暫く封鎖するから、暫く自宅待機と指示待ちで!とにかく詳しい話は私がアメリカから帰国してからにしよう!…じゃ!」
「―――あっ…!」
呼び止めようとするが思い留まる。そして宮本室長は素早い動きで退室し、待機していた調査員と何やら英語で忙しなく会話を交わしながら、廊下を走り駆けていったのだった――。
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