溶け合った心

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宮本室長も去り、冴嶋も矢木も連行され、深々と冷え切った室内には、私と藪中だけが取り残されていた。 まだ何も整理出来ず唖然とする中、人が近付く気配を間近で感じる。 「―――誉さん…」 言うまでもなくそれは藪中で、真上から聞こえた声にビクリと肩を反応させた。 「…………」 どう反応していいのかわからない。彼の視線を感じながら、私は無言で俯いたまま羽織っていたジャケットをキュッと掻き寄せた。 すると藪中がしゃがみ込み、息も届く距離で覗き込んできたのだ。 「――っ!」 重なり絡んだ視線はもちろん逸らせない。 「――誉さん…どうして連絡をくれなかったのですか?」 「…………」 どこか寂しげな声色に胸が痛んだ。 「身体は大丈夫ですか…?本当に遅くなって、すみません」 謝る彼にどうしてとヒリつくように心が軋んだ。この(ひと)は何も悪くないのに、悪いのは… 藪中の気持ちを踏み躙って、振り回してきた自分だというのに。 それでも、何から言葉にしていいのかわからない。雁字搦めになっていた心は今にでも爆発しそうだったが、伝え方がわからないのだ。 「誉さん、とにかく今夜は帰りましょう。眼鏡も割れてしまっていますし…ご自宅までお送りします」 藪中が私の乱れた衣服を整えはじめた。 「っ…や、藪中さん…貴方どうして…」 何故彼があんなにもタイミングよくここへ現れたのか不思議だった。 藪中は私の肌蹴た胸を隠すようにスーツのジャケットのボタンを締めながら言った。 「…強制調査が入ると聞いて宮本室長より先に理研に向かったのですが…車から降りた途端、誉さんの発情フェロモンが漂っているのに気付いたので慌てて駆け付けたんです」 「……そう…でしたか…」 あの時、もし藪中があと一歩遅かったら、私の身体は冴嶋の雄に貫かれていただろう。 そう思うだけで恐怖だった。 「―――っ…」 性器をあてがわれた時の感触をつい思い出し、肌が嫌悪で粟立つ。 それを見た藪中が察知したのか、私の身体をそっと抱き寄せた。 「誉さん…っ…間に合って…本当に良かった…っ…!」 「…藪中…さん…」 藪中の身体は少し震えていた。抱き締められる中、腰に回された腕に力が入る。私も応えるように彼の背に腕を回すと、その震える指先で藪中のシャツをキュッと握り掴んだ。
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