132人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
1
日が傾きかけた頃、私は空飛ぶ車の中にいた。
件の男の人が操縦席に座るその後ろの席で俯きがちに縮こまる。全てを捨ててきたはずなのに、何故か気持ちは晴れない。
彼のもとを離れると決意した、それなのに心は泣いていた。車窓の外に広がる街並みを見ると、彼との思い出がよぎって苦しい。
――心が、凍えていた。
件の男の人に連れられやって来たのは、街の中心部にある高いシンボルタワー。
ここで何をするんだろう?
人が沢山いる中を掻い潜り、一直線に正面のエレベーターまで進んで行く。
私の基は人工知能で、この人は私を必要だと言っていた。でも、何をするのかは聞かされていない。
「あの……」
エレベーターに乗ると同時に男の人を見上げ、おずおずと訊ねる。
最初のコメントを投稿しよう!