第2章 それは、永遠の――

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   しかし男の人は何も答えず、真っ直ぐにエレベーターの階数を見ていた。沈黙の中、機械的な音が響きエレベーターは上がってゆく。  さっきタワーへ来る途中にこの人から聞いた話では、彼は昔、ここにいたという。けれど、娘を亡くして彼はここをやめて……。  そこまで考えたところで、今の自分の姿は彼の娘の姿――そのことを思い出して、また、苦しくなる。 「私、何をすれば?」  正面を向いたままの男の人にもう一度訊いてみた。  すると、ようやくこちらを向き一言。「これから説明する」そう言うのと同時にホーンが一度高く鳴り、エレベーターのドアが開いた。  
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