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「ねぇ、今、人を殺したの?」
幼い少女の声だ。
特に周りを気にしてはいなかった男は、少女へと振り返る。
面倒ならば、この声の主も殺してしまえばいいのだ。
「あなたの力、みたいなの、知りたいの」
少女は怯えてなどいなかった。
怯えるどころか、知りたいと少女は男に言い出した。
騒がれないなら、かまわないか、男はそう考える。
「女、名前は何と言う?」
気付けば、男はそう声を発していた。
「アイリスと言うの。あなたが持っている力みたいなのを知りたいのよ」
少女は名を答えて、さきほどもした質問を一息で再度言う。
目的はそこなのだ、と。男に殺される可能性を、少女は考えていないようで。
ただ男は面白そうに、片眉を上げてみせた。
「面白いな。退屈しのぎには良いかもしれん」
そう言って、男は少女へと歩み寄る。
殺す気は最初に騒がれなかった分、起きなかった。
それよりも、面白いことを言う女だと、退屈しのぎにしてやろう、と。
「私の家族、見てくれる?」
自分よりだいぶ背の高い男を見上げて、少女は問う。
連れて行けと言うように、男は少女を促した。
「私は父がいらないの。弟を捨てようとしてるから」
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