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家への道を歩きながら、少女は時折男を見上げながら話す。
男は意外なことに、少女の歩幅に合わせて、ゆっくりと歩いてくれている。
人間を殺していたけれど、そんなに悪い人じゃないのかしら。少女はそう考える。
無口な男は、特に何も言わない。
「あそこが家よ」
結構大きな家だ。
その門から、一人の男が出て来た。
「あれが父。仕事もしないで、いつも家にいて。それで弟を捨てようとするの」
少女が父と言った男は、酒の瓶を持って通りを歩いて行く。
「あれがいらない人間か」
男は一言そう言って、次の瞬間には少女が父と言った人間の首が吹き飛んでいた。
いらないのだから、いなくなれば良いのだろう、と男は考えて行動した。
「簡単に死んでしまうのね」
少女は父の亡骸を見ても、そう言っただけで、哀しみの感情は浮かべていない。
「弟はね、離れにいるの。まだ小さいのに、母もあの子を嫌うのよ」
そう言って、家の敷地内へと、少女は男を連れて行く。
離れはこっち、と歩く少女の後を、男はゆっくりと歩いて行く。
小さな少年が、庭の片隅にいた。
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