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「あの子が弟なの。私には見えないモノが見えるみたい。それで母はあの子を嫌うのよ」
今も少年は、片隅に座って何かとしゃべっているようにも見える。
その少年が、男にはとても眩しい者に見えた。
少年と話しているモノが、男には見えたけれど、特に気にしなかった。
「あれは、光だな。どこにいても、どんな時でも、光だ」
男は少女に教える。
少ない言葉だけれど、少女にはわかっただろうか。
「そう、あの子は光なのね。なら、大切にしなきゃ」
少女はそう言って、男をまた見上げた。
「あなたは、光なの?それとも違うの?」
少女は男にも興味を抱いたようだった。
男は少し考える。
少女の家族はとても面白そうだ。退屈しのぎには丁度良いだろう。
何よりも、少女がここにいることで、自分が動きやすくなりそうではある。
「俺は光とは無縁のモノだ。人間でもない。それでも、俺を利用するか?」
男は少女に問いかけた。
「違うわ。あなたを利用するんじゃないの。あなたが私を、利用したら良いの」
少女は間髪入れずに答えた。
これは面白い。男はますます楽しくなる。
少女は利用されて良いのだと答えたのだ。自分は人間ではないと、言ったのに。
「ならば、私の気が変わらないうちに、契約をしよう」
男はそう言って、小さな少女を抱き上げた。
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