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「先輩。俺達はどうします?」
「そうだな。最終的な片付けは放課後でいいから、どこか見て回ろうかな?」
「お供しま~す」
「はあ!? 男同士で回って、何が楽しいんだよ!」
俺は抱きついてくる後輩を押し退けた。
「仲良いねえ~」
「妬けますね~」
「あのなあ……」
明らかに面白がっている。
俺がふてくされていると、クスクスと笑いが起きた。
「ほら、行きましょ。他の部の展示も見てこないと」
「そうですよ。先輩は文化祭企画のリーダーなんですから、ちゃんと視察しないと」
「分かってるよ」
俺はしぶしぶ歩き始めた。
そんな俺に、背後から声がかかる。
「先輩」
「なんだよ」
「来年の文化祭、見に来てくださいね」
「えっ?」
「来年は、美術部だけでもっとでかいことやりますから」
「私達、もう『地味部』じゃないんですよ」
「……へ?」
何の事かと思っていると、同級生の女子部員が「あら、知らないの?」とキョトンとした顔で言った。
「私達をバカにしてたっていう、例の運動部の人。理科実験室に来てたのよ」
「それで、『文化部だからってバカにして悪かった。お前らスゲーな』って、そう言って帰っていったんです」
「そうなのか?」
「はい。先輩に直接言うのは気まずいから、2年生のお前らにって」
「なんだよ、それ」
ちょっとムカついたが、あいつらを見返すことは出来たようだ。
「よーし。文化祭終わったら、部室で1杯やるかあ~」
「良いですね!」
「後で購買に寄って、ジュース買いましょう」
「もちろん、部長のおごりですよね?」
「はあ!? 部員全員の分はムリだぞ!」
そんなこんなで、今年の文化祭は終わった。
俺達3年にとって、最後の文化祭。
充実した良い1日だった。
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