ブラックホールの先には

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「どうだろう?でも、もしかしたら男と女くらいの違いはあるかもね?私が男になって、ケン坊が女になるの。」 「えー、そんなバカな。」 「世の中絶対は、無いんだよ。可能性はあるかもしれないじゃない?」 由香里は、宇宙や怪奇現象などの話が好きだった。そういう類の本を貸してくれることもあった。 田坂は基本的に怖がりだったので、その手の話は苦手だったが、由香里はそんなことを気にする相手ではなかった。そんな由香里は、ダムの計画が持ち上がり、村全体で引越す前に行方不明になってしまった。 田坂はその時のことを思い出すと、胸が締め付けられるように苦しくなった。消防団、警察が躍起になって捜しても、由香里は見つからなかった。とうとう由香里の捜索は打ち切りとなり、その村はダムの底に沈んだ。  ところが最近、日照りが続き、ダムの底から田坂の住んでいた村が姿を現したのだ。由香里の家も、田坂の実家のあともはっきりと確認することができた。  最近になって、田坂の今住んでいる村のトンネルが通っている山が実は古墳であることが判明し、日々、発掘のための車両が行き来するようになり、このダムのあたりの地層も研究対象となることが決まったのだ。このことを、由香里が知ったら、きっと喜ぶだろうなと田坂は思った。由香里が生きていればの話だ。     
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