6人が本棚に入れています
本棚に追加
「あれって嘘だと思うんですよ。」
「どういうことかな。」
「ブラックホールの先には、別の世界が存在していて、ブラックホールに吸い込まれた人間は、そこでまた再生されると思うんですよね。」
荒唐無稽な田坂の話に、老人は戸惑い黙り込んでしまった。
「僕ね、小学生の時に、好きな子がいたんです。名前は、木下由香里っていってね。特別可愛い子ではなかったんですが、色が黒くて活発な子でした。」
「・・・・。」
「その子、小学6年の時に、行方不明になってしまいましてね。村人総出で探しても見つからなくて。もしかして、ブラックホールに吸い込まれちゃったのかなあ、なんて当時バカなことを思ったりしました。」
「・・・・。」
「でも、そんなわけないですよね。ところで、この村の山が古墳だったことがわかって発掘が始まるらしいですよ。何でもあのダム周辺の地層も調べるらしくて、しばらくはダムも水をためることは無いらしいです。あのあたりも調べられたら、困るでしょう?木下さん。」
「君は何を言いたいのかね。田坂君。」
「彼女が居なくなる前に、電話がかかってきたんです。彼女、あなたに痛いことをされたって。」
「・・・体罰くらい、どこの家庭にもあるだろう。」
最初のコメントを投稿しよう!