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「いや、違いますね。あなたは、彼女に酷いことをしたんだ。違いますか?あなた確か、彼女と血が繋がってませんよね?あなたは彼女の継父だ。」
「何を証拠に!」
「出るんですよ。未だに。彼女は泣きながら、僕に訴えてくるんですよ。」
「・・・嘘だ!デタラメだ!」
明らかに老人は狼狽していた。
「酷いですねえ。自分の欲望のために。あんな小さな子供に酷いことをするなんて。証拠ならありますよ?」
「何が目的だ。」
「別に?目的なんてありませんよ。ただあなたを許せないだけ。」
「あの女が悪いんだ。子供だけ残して、さっさと死におって。わしの目の前に成長しはじめた若い娘の体があれば、欲しくなるもんだろう。」
田坂の目に明確な殺意が芽生えた。カーブに差し掛かったところで、急ハンドルを切る。
驚愕に目を見開き、叫ぶ老人の顔がバックミラーに映った。タクシーはダムに向かって真っ逆さまに落ちてゆく。落ちる寸前に、扉を開けて田坂は道路に転がり出た。
運転操作を誤ったとして、田坂はたいした罪には問われなかった。証拠なんて元々無かった。由香里の幽霊の話も全て嘘だ。
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