希望の象徴

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号外! 世界の破滅を食い止めた男! とある日の昼下がり、世界中に一つの情報が行き渡った。 世界的に有名な新聞、世界新聞に掲載された一つの記事。その内容に誰もが目を疑った。 世界を滅ぼす悪魔、大罪の悪魔の一体を一人で滅悪。その男の名は『白銀』。 この知らせにより世界中の一部の者達は歓喜した。殆どの者が首を傾げる中、本当の意味を知っている者達は声を大にして皆に知らせる。 英雄が現れた! 千年前の悲劇の再来を食い止める英雄が! 千年前。その単語で漸く事の重大さを理解した者達は一切に歓喜する。 しかし、この知らせを受けた者の極一部しか知らないだろう。滅悪の裏側にある一人の男と女の苦難を。そして、悪魔が目覚め始めた予兆だという事を。 「良いか? 自分一人で何とかしようとか思わなくて良いんだ。苦しかったら頼れ。辛かったら話せ。人間ってのは言葉でしか分からないんだよ。だから……だからよ。俺だけにはちゃんと喋ってくれ。お前とは血の繋がりも無いし、信頼出来る程の長い時間もない。契約も無ければ命令権もない。だけどさ、短い時間だったけど……友達になれたろ?どんな下らない事だって良い。俺にだけは本当のお前で居てくれ」 「……レイン……わだじは……友達になっでもいいの?」 「いいさ。テメーが化け物ってんなら俺はなんだよ。珍種の化け物か?」 「……グスッ……私だけの英雄っすよ」 「なんだそりゃ……」 一人の少女との出会い。それが俺の人生の分岐点となっていた事に、まだ気付いてはいなかった。 意識が薄れる中、最後に見えたのは幸せが飽和した女の子の泣き顔だった。
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