幻の小説『ミレフレ』

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 それは一年程前、サイトに凄い小説があると噂になり、クリエイターも読み専も興味を惹かれ、何曜日の何時になると公開され、数分しか読めないらしいと、不可解な情報が錯綜してサークルの掲示板を賑わした。  真っ白な透明の表紙で、なぜか読んでいると途中で文字が消えてフリーズする。最後まで読めた者はいないので、それが完結しているのかも不明だった。  物語は絵本のようで、ページを捲る毎に情景が色塗られて浮かんでくる。ジャンルはファンタジーでライトな文体だが、現代に問題を投げかける傑作だと称賛された。  プロローグはリアルに少女の悲しみから始まり、少年が助ける事で少女は解放され、世界を自由に飛び、悲しみに濡れたモノクロームの世界を色鮮やかな美しい楽園へ変えて行く。  しかし読んだ記憶さえ曖昧な読者もいて、『宇宙人が書いた本だから記憶が消されるんだ』。そんな飛躍したコメントがサイトを席巻した。  そしてその小説はいつの間にか完全に消えてしまい、この数ヶ月間、誰も目にする事なく噂にも上らなくなった。  それが幻の小説『ミレフレ』。  ネット小説を書き始めて間もない連たちでさえ知る不思議な物語であり、クリエイターなら誰しもそんな小説を書いてみたいと憧れた。
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