167人が本棚に入れています
本棚に追加
手の中でiPhone9・スペースブラックがスパークし、何かの危機を知らせるようにビリビリ点滅している。
神の怒りか?
それとも奇跡への誘いか?
突然、バチッンと火花が散って左腕から首へと電流が走り脳を直撃した。その尋常ではない痛みに、ロックスターがギターを振り上げて魂の叫びを上げた。
『ウギャオー!』
しかし現実はいつの世も無情なり。
東野連は悲鳴を上げてふと我に返り、スマホを握ったまま眠ってしまった事に気付く。マッハの素早さで座り直して顔を隠したが、国語の教科書がパタッと虚しく倒れて露呈する。
「東野連くん。どうかしました?」
先生が近寄って教科書を拾い上げて睨み、クラスの生徒が呆れた表情で連に注目した。
「あれっ?今、僕の頭に電流が駆け巡ったのです」
「それで目が覚めた?それは、良かったわね」
連は昨夜遅くまでネット小説を執筆して寝不足だったが、その出来栄えが気になって授業中だというのにiPhone9を教科書で隠して読み返していたのだ。
国語の教師・藤枝景子が東野連に近付くと、そのスマホをサッと手から取り上げた。
「先生。それだけはお許しください。今、小説のコンテストやってまして、全身全霊で取り組んでいるのです」
しかし、そんな言い訳が通じるはずはなく、景子先生はポケットに入れて颯爽と教壇に戻る。
最初のコメントを投稿しよう!