プロローグ・電撃

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 手の中でiPhone9・スペースブラックがスパークし、何かの危機を知らせるようにビリビリ点滅している。  神の怒りか?  それとも奇跡への(イザナ)いか?  突然、バチッンと火花が散って左腕から首へと電流が走り脳を直撃した。その尋常ではない痛みに、ロックスターがギターを振り上げて魂の叫びを上げた。 『ウギャオー!』  しかし現実はいつの世も無情なり。  東野(ヒガシノ)(レン)は悲鳴を上げてふと我に返り、スマホを握ったまま眠ってしまった事に気付く。マッハの素早さで座り直して顔を隠したが、国語の教科書がパタッと虚しく倒れて露呈する。 「東野連くん。どうかしました?」  先生が近寄って教科書を拾い上げて睨み、クラスの生徒が呆れた表情で(レン)に注目した。 「あれっ?今、僕の頭に電流が駆け巡ったのです」 「それで目が覚めた?それは、良かったわね」  連は昨夜遅くまでネット小説を執筆して寝不足だったが、その出来栄えが気になって授業中だというのにiPhone9を教科書で隠して読み返していたのだ。  国語の教師・藤枝景子が東野連に近付くと、そのスマホをサッと手から取り上げた。 「先生。それだけはお許しください。今、小説のコンテストやってまして、全身全霊で取り組んでいるのです」  しかし、そんな言い訳が通じるはずはなく、景子先生はポケットに入れて颯爽と教壇に戻る。
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