プロローグ・電撃

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「書くことはいいことです。しかし、規則は守ってください」 「Oh my god!」  連は大げさに嘆いて机に突っ伏し、クスクスと笑い声が教室に響くが、小鳥の(サエズ)りかと手で双眼鏡を作ってバードウオッチングをし、憎めないポップスターの真骨頂を披露した。 「いや、マジで頭が光ったんだ。サイバー攻撃か?まだ脳の真ん中辺りがビリビリしている。冷静に推理すればiPhoneのバッテリーが漏れた可能性もあるが、ミステリーよりファンタスティックな方が心惹かれると思わない?」 「バッカじゃない。寝ぼけて変な夢見ただけでしょ?」  斜め後ろの恩田文子が冷静な表情で連に追い討ちをかけ、生徒の大多数が頷いて連が肩を竦めて席に着く。  文子(フミコ)は最近短編小説で賞を取り、連はミッキーマウスが鼻が取れたように焦っていた。背が高くてユニークなイケメンであるが、剣道部の文子は身長でも連と肩を並べている。 「君は手を広げて空を飛ぼうとしている。ゴーイングマイウェイ、しっかり地に足を付けて歩きなさい。これは賞を取った私からの貴重なアドバイスよ」 「僕は大賞を取る予定でね。短編ではなく、長編でダンクシュートを決めてみせる」 「ふーん」  連と文子はマイフレンドと呼び合う仲なのに、子供じみた言い争いは絶えず、頃合いをみて景子先生が教壇を叩いて遮り、悩める少年に残酷なテーゼを告げた。 「連くん。大事なスマホを返して欲しかったら、後で教員室に来なさい」 「だってさ」  前の席の村上順也が振り向いて微笑み、隣の宮部久美子も呆れている。文子を含めた四人は小説仲間であり、小学校からの友人である。 「連くん。これで何回目?」 「今週だけで3回目。ベースボールだったら、ゲームセットよ」  文子がワザとらしく指で数えながら、連を横目で睨んで嘲笑ったが、連は天使の微笑みで言い返す。 「正確にはチェンジ。僕は九回裏ツーアウトで満塁逆転ホームランを打つタイプでね」
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