少女のゴースト

2/2
164人が本棚に入れています
本棚に追加
/201ページ
 連はビニール傘を差して静かな公園の通りを時折スキップし、すぐに立ち止まって雨が跳ねる音に耳を澄ます。するとリズムに合わせてスキップを踏む音が聴こえる。 『こんなのはどう?』  ビニール傘を回し、右足を前に蹴ってタップダンスの真似事をし、『雨に唄えば』を口ずさむ。古いミュージカル映画であるが、このシーンだけはYouTubeで観てカッコいいと憧れ、気分が落ち込んだ時や雨の日に踊ったりしていた。 『やるねー』  歌声は聴こえないが、タップの音がしたので連はクルッと回って振り向き、5メートル程離れた位置で水溜りに足を踏み出した少女のゴーストを視た。  身長は約165センチ。スリムだがスポーティーな体型。ブルーラインの白いシャツに襟元のリボンはピンク、スカートは膝丈のチェック柄。シルバーのミディアムヘアーで連の方に顔を向けて、動きを止めた姿に雨が透けて地面に落ちている。 『…………』  二秒程見つめ合ったままゴーストは消え、連は暫し佇んでから何事もなかったように歩き出し、高鳴る胸の鼓動を感じながら、頭はクールに思考を巡らせて分析を試みる。 『サイレント・ムービー。少女のゴーストはダンスは得意だけど、喋れない?』  そして数歩踏み出して立ち止まり、歩道の水溜りに『MOMOE』と雨が跳ねるのを視て、Mのサインから、少女は自分を信頼して名乗り出たと思った。
/201ページ

最初のコメントを投稿しよう!