庭の棺桶

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 ほわ、と顔へ温さが当たり、月白が抱える程に湯気を呼んでいることに気づく。  どうしたいのかとしばらくその様子を眺めていると、月白はするりと着物を脱いだ。 「私は湯気に浸かろう」 「湯気じゃ浸かるじゃない。浴びるだ」    寝所へ寝転がれば、なし崩し的というか必然的というかに呂色はすぐ脱がされるが、月白はいつもあまり着乱さない。    湿気でほんの少し霞むのが、より神秘的に魅せる。    月白の住処に溢れる月の光と和えられて、湯気もかろやかに巻いていた。  月白は、肌へしとりと懐いているのだろう湯気を髪へも塗るように、後ろに撫でつけた。    両腕を上げてそうしている格好を見るだけで体が高鳴り、整えてもらったぬるい湯でさえのぼせてしまいそうに目がくらむ。 「湯気の中の呂色を、また見たかったのだ」    月白がそう言いながら、呂色へかかる湯気を息で払い、顔を寄せてくる。 「俺なんて、お前が見る程のもんじゃない」    以前温水の中で月白を見てから同じことを考えていたことも、自分の方がすっかり見惚れていたことも悟られたくなくて、ぷいとそっぽを向く。
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