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気づけば肩で息をしなければならない程疲れ、浮かしていた腰を落とし直しても湯は胸まで足りなくなっていた。
「たしか、汗をかいたあとの風呂はまた一息良いものだったな」
幾分しっとりしていても、湯をかぶったようすはない月白がいつものすました顔でそう聞いてきて、呂色は頬を膨らませながら桶の中に深く座り直した。
「あぁ、いい風呂だ。気持ちが良いから、俺は一晩ここから出ないぞ。濡れたくないお前は今夜ひとりで眠るんだ」
「心配ない。そろそろ濡れぬ風呂をつくってやる」
折った足のあいだにころんころんと放り込まれてきた白玉は、辛うじて残っていた湯をぐんぐん吸った。
「お前、汚れることもないからって、確かな風呂を思い出してないな。こんなに綿花を使えば、これはもう風呂じゃなく寝床だぞ。布団だ」
どれだけ用意してきたのか、桶の中へ次々放り込まれる綿花はあっと言う間にもこもこと首に迫るまでになった。
「ぬくかろう」
「溺れる!」
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