庭の棺桶

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 ふたりで、それからたっぷりとのぼせたのだ。  日の高い昼間から庭の花が薄暗さに隠れる頃まで、そんなことをしている間に居なくなってしまった水鬼に呂色は猛省しながら、織部と瑠璃を連れて月白の住処へ戻った。    すっかりさらさらと、さっきまでの痴態など幻だったかに髪を流し、月白は泣きむせぶ織部と瑠璃のたどたどしい説明を静かに聞いて岩戸を開いた。 「水鬼様がいつもここへ寄らないはずの冷えた水が通ってきているからだめだと一昨日から河原へ出して下さらないのを、僕達は…、僕達は、今日こそ我慢し切れずにふたりでこっそり河原へ出てしまったのです」    月白の前だという多少の緊張のおかげか、むしろ幾分落ち着いて話が出来るようになった織部と瑠璃は交互に反省し謝罪した。    そこへ呂色も反省と謝罪に並びたかったが、そうなると月白もこっちへ並ばせないといけなくなってわけがわからなくなるなと、今は一先ず謝り先の水鬼探しをしてもらうことにする。 「怒られてしまえばいいと、簡単に考えていました。いつでも水鬼様は僕達をすぐ見つけてしまうし、今日もやっぱりすぐ見つかって、僕達は叱られました」    そうして諭しながらも、水鬼はふたりの冷えにかじかむ手を溶かすようにずっと握ってくれ、織部と瑠璃も甘えたまま昼寝をしたうちに居なくなっていたという。
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