庭の棺桶

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「僕達が言うことを聞かないから、もう嫌になってしまわれたのでしょうか…」 「織部、瑠璃、もう泣くな。お前達も水鬼を煩わせたかもしれないが、私も呂色とすこし勝手をしていた。皆で、謝るより先に日頃の感謝を伝えねばな」  やはり同じ反省と謝罪を腹にしているだろう月白はそう言いながら、出してきたぱっくり半分の水晶玉を下弦の月のようにコケへ刺し、向かい合わせていつかの真鏡をかざした。  映るものわずかでも見逃さずにいなければと呂色がそこを覗き込めば、織部と瑠璃も揃う。  しかしいくら目を凝らしていても、鏡面は白く霞んだまま何も見せてくれない。 「ちょっと貸せ。俺は前これで見れたはずだ。その水晶を映していれば水鬼を見つけられるのか?」    我慢できずに自分自身でもっとよく覗いてみようと月白の手から鏡を取り上げようとすると、月白はあっさり鏡を置き立ち上がってしまう。 「匡の外だ。これは本当に水鬼がこの庭を出て行ってしまったのかもしれん」 「月白、お前まさか去る者追わずなんて言ったら承知しないからな!」    困惑の八つ当たりでしかなかったが、岩戸へ神器を仕舞い自分も中へ入ってしまった月白へ大声を上げると、白の着物を投げられた。 「戻りを願いに行くしかなかろう。織部と瑠璃にもどうにかその白を巻いてやれ。水鬼が居れば丈を詰めるのも容易なのだろうが、その手に関しては私にもどうしようない」    同じくと頷きながら自分も手早く白に着替え、とりあえずあちこちを結んでどうにか織部と瑠璃にも白を巻いてやった。
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