庭の棺桶

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 菊綴までしっかりつけた結袈裟姿になった月白が神妙な面持ちで岩戸から出てきて、言い聞かせるように葉扇子を掲げる。 「遠いぞ。なるだけ抑えて動くが、手を離すな」    織部と瑠璃はすでにしっかりと繋ぎ合っていたので呂色はその繋がれた手を握り、反対の手で月白の袖を握った。  数が多いからか、いつもののろく早いへんな道ではなく、鈍い光にのまれていくようなすこし重たい道だった。  その遠さもよくわからぬうちにわっと目の前が白くけぶり、一気に息苦しくなる。    けほと咳き込んでしまったのは呂色と月白だった。  織部が繋いでいた手を引いて呂色を呼び囁く。 「あまり口を開けておおきくこれを吸ってしまうと、体の中に霜が入って凍ってしまうのです。なるだけ下を向いて、鼻からすこしずつちいさな息をなさって下さい」    どこもかこも真っ白な辺り一面に特段戸惑った様子のない織部と瑠璃が不思議で、呂色は言われた通りの細かい息にかえながら聞いた。 「お前達、雪を知っているのか。俺もたまには見たことがあったが、こんなに雪ばかりなのを見るのは初めてだ」    瑠璃はどこか懐かし気に、吹き荒ぶ中へ手を伸ばした。 「僕達は、こわい人達のところへ売られてしまうまでは、こんなところに居たんでした。本当は、冷えた水も懐かしくて、触りたくなってしまったのかもしれません」
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