月の下に咲く

庭の棺桶

「なんと、何をしとるんじゃ！」

　引っ繰り返りそうな声と共に、所かまわずまぶさってくる湯気ほど優しくない白から庇うような影が、前に立った。

「水鬼！　いつも頼むばかり当てにするばかりで本当に悪かった。庭でもお前がしたいようにできる時間をきっと作るから、戻ってきてくれ」

　呂色がそう言い終わるのを待てないかに、織部と瑠璃もごめんなさいを繰り返す。

「私も水鬼に頭を下げたい。お前が居るからこそある庭だという事を忘れた日はない。これからはこの感謝を、もっと言葉にして伝えられるよう努力する」

「月白様まで！　なんと畏れ多い…。しかし、今はそれどころじゃない。織部と瑠璃までこんなとこへ連れてきて何をお考えですか！　一刻も早く庭へ戻りますぞ！」

　来たばかりのもったりする間を、怒る水鬼から尻を叩かれるように戻る。

　ただそこに水鬼が混ざり戻っているというだけで十分だった。