バクハツスル

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バクハツスル

 迷子になってしまった。 夏祭り、暑苦しい浴衣を着せられて、少年は両親に連れられて歩いていたが、両親の姿を見失ってしまったのだ。  もう小学4年生なので、泣きながら歩くのも恥ずかしいが、泣きそうな勢いで両親の姿を探した。 あまりに金魚を掬うのが上手いお兄さんに見とれていたのだ。そのお兄さんは、真っ黒な髪の毛に、切れ上がった涼しげな目元がまるで女の人みたいに綺麗だった。肌の色は白く、真っ黒な浴衣が印象的で、まるでこの世の物ではないような雰囲気を醸し出していた。  赤い出目金を僕に差し出してきた。少年にくれると言うのだ。差し出された金魚は、水を入れた袋の中を泳いでおり、お兄さんの黒い浴衣を透過して、まるで宇宙を彷徨う金魚のようであり幻想的だった。少年がお礼を言って、振り返ると両親はもう居なかったというわけだ。  出店の一軒一軒を必死に探したがなかなか両親は見つからない。その時、ふいに暗がりから声をかける者がいた。 「おや、僕は迷子かい?」     
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