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そこには、これまで少年が見たことも無いような、綺麗なお姉さんが座っていた。少年は浴衣を着て、両親を必死で探していたので、汗まみれなのに、そのお姉さんは巫女さんが着るような着物を着ていて、しかもその生地は見たこともないような虹色のような色の繊維で織られており、まるで今の季節が冬であるかのように、汗ひとつかかず、涼しげな顔でそこに座っていた。
お姉さんの座る屋台には、真っ白な卵が所狭しと並べてあり、食べ物ばかりの屋台と一線を画しており、摩訶不思議な雰囲気の店であった。
「うん、お父さんとお母さんとはぐれてしまったの。」
少年は、その人に助けてもらいたくて、すがるような目で見つめた。
「そうかい。じゃあ、そこの卵を好きなのを持っていくがいいよ。」
そう言うと、形の良い唇を両端に引いて笑った。少年は両親を探して欲しいのに、女は卵を持って行けという。まったく話がかみ合わないことに少年は戸惑いを覚えた。
「あの、迷子になったんです。警察の人に知らせてください。」
少年がそう訴えると、その女は静かに笑うばかり。
「その卵を持っていれば、僕の両親にきっと会えるよ。持ってお行き。御代はいらないよ?ただしタダではないけどね?」
御代はいらないけど、タダではないとはどういうことだろう。
少年はそう言われ、半信半疑で、一番手前の卵を手に取ろうとした。
その瞬間、卵がパンッと音を立てて爆発した。
その瞬間に、割れた卵から緑色の汁が飛散し、少年の浴衣に飛び散ってしまった。
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