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猛烈な腐臭がした。あたりは、その腐臭に騒然とし、ちょっとした騒ぎになった。もちろん少年もそのにおいに耐え切れず、思わず口と鼻を手で押さえた。卵屋の女はその強烈な臭いにも微動だにせず微笑んでいた。
「っくさ、臭い!」
あたりは阿鼻叫喚となり、その店と少年は遠巻きに取り残された。
騒ぎを聞きつけたのか、ようやく両親の顔が見えた。
「おとうさん、お母さん!」
少年が駆け寄ると、両親は思わず顔をしかめた。
「どこいってたの?どうしたの?そんな酷い臭いをさせて。」
口と鼻を覆いながらも少年に畳み掛けた。
「そこの店で、卵を持っていくようにお姉さんに言われて手で触れた瞬間に卵が爆発して、中身が浴衣に飛び散ったの。」
と少年が指を指す先には、その店も女の存在も消えうせていた。
「あれ?確かに、そこに・・・。」
「とにかく!家に帰って着替えるわよ!」
そう両親に手を引かれ、祭りもそこそこに引き上げたのだ。
家に帰って、浴衣も体も洗ったが、いつまでたってもその臭いは消えなかった。
あくる日、学校に登校するも、臭いは消えず、同級生からずいぶんとからかわれた。
あれからというもの、少年は臭いにやられたのか、いっさい食欲がなくなってしまった。
食欲が無いというより、まったくおなかが空かない。
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