第六章 飛翔せしもの

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四、揺れ動く籠の中で  俺は今、山手線に乗っている。  つり革につかまり、立ったまま流れる窓の外の景色を見ていた。  亮達のイジメが無くなってから、学校生活ははいたってフツーなものになっていた。  特に事件も無く学校がが終わり、フツーに帰ってテレビでも見て一日が終わる。  ……はずだった。  合氣道をしていなかったら……。  俺は学校が終わると愛氣と一緒に道場に直行した。  そこで虎蔵大先生から今日はちょっと変わった稽古をしようかと言うことで、この電車に乗っているとゆーわけ。  だから今、俺の隣にはもちろん……。 「なにボーッとしてんのよ」 「あの、これからドコ行くんですか?」 「修行場(しゅぎょうば)じゃよ」  ねずみ色の和服姿の虎蔵じいさんが静かに答えた。 「直人、今フツーにシカトしたでしょ」  修行場?  こんな都会のど真ん中で、合氣道の稽古をするとこなんてあるのか?  それともまた出稽古だろうか。 「直人……。二教、三教、四教、好きなの選んでいいわよ」  愛氣の右手が俺の右手に伸びる。  思わず手を引っ込める俺。 「分かったよ。もう、ちょっと考えごとしてただけだって」
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