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「だからって無視してイイことにはならないでしょ」
ムッ。
タメのクセに愛氣ってなんかお姉さんぶるとこあるよな。
すぐに合氣道の技にもってこうとするしさ。
「あ、今ウザそうな顔したぁっ!」
「してないよ」
「した」
「ホッホッホッ。仲良きことは美しきことじゃな」
別にそんなんじゃ……。
「せっかくじゃから、少しここでも稽古しようかの」
「え? ここでって、電車の中で?」
虎蔵じいさんはニコニコして俺と愛氣を見ている。
車内はまだ帰宅ラッシュ前とは言え、椅子は結構埋まっていて立っている人もまあまあいる。
こんなとこで稽古なんてしたらさすがに迷惑じゃないのか?
「な~に稽古と言っても別に技をかけるわけじゃない」
な~んだ。でもそれじゃあ……。
「二人ともつり革から手を離しなさい」
「うん」
「え? あ、はい……」
言われるままにつり革から手を離す俺達。
そう言えば虎蔵じいさんは、ずっと自分の前で手を組んだまま一度もつり革やポールに掴まってなかったような……。
《ガタン、ゴトン……》
揺れる電車の中。
つり革から手を離した俺はなんとかバランスを取ろうとする。
……が。
「あっ!」
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