第六章 飛翔せしもの

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「だからって無視してイイことにはならないでしょ」  ムッ。  タメのクセに愛氣ってなんかお姉さんぶるとこあるよな。  すぐに合氣道の技にもってこうとするしさ。 「あ、今ウザそうな顔したぁっ!」 「してないよ」 「した」 「ホッホッホッ。仲良きことは美しきことじゃな」  別にそんなんじゃ……。 「せっかくじゃから、少しここでも稽古しようかの」 「え? ここでって、電車の中で?」  虎蔵じいさんはニコニコして俺と愛氣を見ている。  車内はまだ帰宅ラッシュ前とは言え、椅子は結構埋まっていて立っている人もまあまあいる。  こんなとこで稽古なんてしたらさすがに迷惑じゃないのか? 「な~に稽古と言っても別に技をかけるわけじゃない」  な~んだ。でもそれじゃあ……。 「二人ともつり革から手を離しなさい」 「うん」 「え? あ、はい……」  言われるままにつり革から手を離す俺達。  そう言えば虎蔵じいさんは、ずっと自分の前で手を組んだまま一度もつり革やポールに掴まってなかったような……。 《ガタン、ゴトン……》  揺れる電車の中。  つり革から手を離した俺はなんとかバランスを取ろうとする。  ……が。 「あっ!」
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