第六章 飛翔せしもの

16/27
前へ
/27ページ
次へ
「ちょっと直人! 急にこっちに倒れて来ないでよっ!」 「んなこと言ったって。俺だって好きで倒れてんじゃないんだから」 「ほら、しっかり立つ」 「ホッホッホッ。どうじゃ。なかなかしんどいじゃろ」 「はい。意外と立ってられないもんなんですね」 「直人だけでしょ」  確かに三人の中では俺だけカッコ悪いことになってるけど。  虎蔵じいさんと愛氣に比べられてもねぇ。  しかし、ふたりとも良く平気で立ってられるよな。 「まあ、今度倒れたら、愛氣のその柔らかくて意外とある胸で……」  愛氣の顔がまた紅に染まって……。 「それ以上言ったら、二教の刑」 「はいはい。すいませんでし……」 《ガッタンッ!》  俺がまたいい加減に返事をしようとした時、いきなり電車が急に揺れた!  咄嗟に上のつり革に掴まろうとするが間に合わない!  また愛氣のほうに倒れそうになる。  しかも今度は右腕を上に上げたままだ。  このままだと愛氣の頭に俺の右手が……。  当たるっ! 「よけろっ!」  愛氣もまさか俺がそんな風に倒れて来るとは思わなかったのか、()けようとしない。  それどころか、よろける俺に向かって来たじゃんか!   
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加