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そして、そのまま俺の右腕に自分の両手を当てる。
と、同時に俺の腕は返され、俺は愛氣に背中を向けて左手を床に着いて立て膝になった。
気づいた周りの乗客の何人かが、俺達に驚きの視線を向ける。
『電車、揺れますのでご注意ください』
今さらおせーよっ!
間の悪いアナウンスに少しキレそうになる。
「大丈夫? 咄嗟に身体が動いちゃって」
俺を優しく立ち上がらせる愛氣。
見ていた客達も視線を俺たちから外して行く。
「あ、ああ俺のほうこそゴメン。だけど今のはワザとじゃないから」
「うん。今のはしょうがないよ」
「それよか今の……」
「今の?」
「その動き」
「一教じゃ」
今の揺れにもビクともしなかったのか、さっきと同じ姿勢のまま虎蔵じいさんがいた。
「いっきょう……」
「またの名を腕押さえとも言うがの」
「直人も稽古したことあるでしょ?」
「そんなのあったかな?」
「ほら、準備体操でやってるのと同じよ」
準備体操……。
そう言えば、技の稽古に入る前にストレッチや、変なラジオ体操の変形みたいなのをやってたような……。
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