第六章 飛翔せしもの

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 なんか技につながる大事なもんだって亜美さんや他の黒帯の人達も言ってたけど。  正直、技に比べるとたるくて俺はまだ全部覚えていない。 「もぉ~。体操も真面目にやんなきゃダメなんだからね」 「いいんじゃ。あんなもの。形だけ覚えても意味は無いでの」 「ちょっとおじいちゃん問題発言。他のお弟子さんが聞いたら気悪くするよ」 「ホッホッホッ。これはワシとした事が。つまり氣を込めて体操もしなけりゃならん言うことじゃて」  確か、これが基本だとか言って手刀(てがたな)で、正面打ちしたのを前で(さば)く稽古があったっけ。  それが一教だったのか。  でも、基本のわりには結構難しくて中々決まらないからあんまし好きじゃなかったんだよ。  まさか、こんなところで『本氣の技』を体験するなんて。  まっ、そのお陰でケガしなくて済んだんだけど。 「直人、良く受け身とれたね」 「え? ああ、一応毎日稽古してるしな」 「でもスゴいよ。うまく力を流してたの分かったよ」 「そ、そうか」  愛氣に褒められて、俺はちょっと嬉しくなっていた。 『次はしぶや~渋谷~』  車内のアナウンスが駅名を告げる。 「さ、ワシらも降りるぞい」  え!? 降りるって。  よりによって渋谷?  こんなゴミゴミしたところに道場なんてあんのかな?  平日の放課後だと言うのに、たくさん降りる人達に混じって俺達も外に出た。
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