第六章 飛翔せしもの

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五、スクランブル  目の前に忠犬ハチ公の銅像がある。 「この銅像はなんでも、戦争の時一度溶かされて電車の部品になったから、今目の前にあるのは二代目なんだぜ」 「知ってるわよ。今日、社会の授業で先生が言ってたじゃない」 「そうだっけ?」 「そうよ。もぉ~直人ったら、肝心の大事な勉強の時は寝てるくせに、横道の話は覚えてるんだから」 「なあ、愛氣って『もぉ~』って口ぐせだよな?」 「そ、そうかな」 「ああ……分かった!」 「な、何よ、急に」 「愛氣の前世はきっとウシだったんだ」 「……なーおーと~っ!」  来る二教が! 《ガンッ》 「ヌワッ! イッテェッー!」  と思ったら思いきり足を踏まれていた。  実は愛氣の技で一番痛いのってこれなんじゃねぇ~んだろ~か。 「何よ。直人は妖怪ヌワヌワじゃない」 「なんだよ。俺のには続きがあったのに」 「何よ」 「かわいい……」 「かわいい?」 「仔牛って――」 《ガンッ》  そりゃ、踏まれるわなフツーに。 「ちわゲンカは終わったかの」 「だから、違うってばっ。おじいちゃん!」 「そ、そうですよ。ホントそんなんじゃないですから」 「ホッホッホッ。良い良い」   
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