0人が本棚に入れています
本棚に追加
五、スクランブル
目の前に忠犬ハチ公の銅像がある。
「この銅像はなんでも、戦争の時一度溶かされて電車の部品になったから、今目の前にあるのは二代目なんだぜ」
「知ってるわよ。今日、社会の授業で先生が言ってたじゃない」
「そうだっけ?」
「そうよ。もぉ~直人ったら、肝心の大事な勉強の時は寝てるくせに、横道の話は覚えてるんだから」
「なあ、愛氣って『もぉ~』って口ぐせだよな?」
「そ、そうかな」
「ああ……分かった!」
「な、何よ、急に」
「愛氣の前世はきっとウシだったんだ」
「……なーおーと~っ!」
来る二教が!
《ガンッ》
「ヌワッ! イッテェッー!」
と思ったら思いきり足を踏まれていた。
実は愛氣の技で一番痛いのってこれなんじゃねぇ~んだろ~か。
「何よ。直人は妖怪ヌワヌワじゃない」
「なんだよ。俺のには続きがあったのに」
「何よ」
「かわいい……」
「かわいい?」
「仔牛って――」
《ガンッ》
そりゃ、踏まれるわなフツーに。
「ちわゲンカは終わったかの」
「だから、違うってばっ。おじいちゃん!」
「そ、そうですよ。ホントそんなんじゃないですから」
「ホッホッホッ。良い良い」
最初のコメントを投稿しよう!